大作映画の脚本の翻訳 (3) |
昨日の続きです。 こうした問題があったものの翻訳は進み、半ばくらいまで仕上がった頃、日本の出資企業(便宜上、A社とします)から連絡がありました。映画の打ち合わせに 社長が来ると言うのです。そして、通訳を私に頼むとのことでした。これでこの胡散臭い話も信憑性がぐっと増しました。勿論、通訳は引き受けました。 しばらくしてA社の社長と社員がやって来ると、ようやく私はプロジェクトの詳しい話を聞くことができました。 なんでも、前から楊貴妃を映画化したいと考えていた社長は、カナダの空港の本屋で「Anneau de jade」の英訳版を見つけ、これだと思い、フランス人である作者に連絡を取ったとのこと。随分、ややこしい話です。 そして、すでに作者を日本に招待して、かなりの打ち合わせをしているとのことでした。昨日、書いたように、その時、訳させたものが出来が悪かったために、作者にパリで翻訳会社を探すようにと云ったんですね。その後の経緯はすでに書いた通りです。 社長はこのプロジェクトは「ラストエンペラー」クラスのものだとぶちあげましたが、実際にこの名作の副監督(日本の助監督とは違い、かなりの権限を持って います)とも会っていますから、まんざら嘘でもなかったのでしょう(ベルトルッチ監督はスケジュール的に無理だとのこと)。 私は通訳としてついて行ったのですが、主役の楊貴妃の役は「ラスト・エンペラー」で出ていた中国人女優(名前は忘れました)がいいとか撮影は中国でしたほうがいいといった話までしていたのを覚えています。その他、多くの映画関係者とも会い、様々な打ち合わせをしました。 また、これは映画とは関係ありませんいが、パリの有名なストリップショー(リドやクレイジーホース等)を日本に持って行くといったプロジェクトの話もありました(その時会った人間はフランスマフィアのボスでした)。 何日かして、社長は日本に帰り、私は翻訳の仕上げに取り掛かりました。そして、翻訳は無事に終わり、ハードコピーとフロッピーをA社に送りました。当然請求書も。通訳料金と合わせると結構な金額になったため、若干の不安もありましたが、しばらくして無事支払われました。 その後、このプロジェクトはある程度までは続いたのですが、なんとなく立ち消えになってしまいました。映画の世界ではよくあることのようです。 実はこの話は何年か後に一度復活し、週刊誌でも紹介されたことがあります。また、私もA社の社長と再会するのですが、この時も結局流れました。 ストリップショーの話も実を結ばなかったようで、その後A社の噂も聞くことはなくなりました。 では。 |
by fwnd9951
| 2014-10-13 07:43
| その他
|
<< 恋愛の法則(23):3カ月以上... | 恋愛の法則(22) >> |